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2025年10月27日
映像制作に挑戦してみたいけれど、「とりあえずカメラを回してみよう」と勢いで始めて、いざ編集段階で「思っていたのと違う」と困った経験はありませんか? 実はその原因の多くは、事前準備=構成や絵コンテの不足にあります。
映画もCMもYouTube動画も、すべての“伝わる映像”は紙の上から始まります。構成案や絵コンテは、映像制作における「設計図」です。これを描くことで、完成形のイメージが明確になり、無駄な撮影や編集を減らせるのです。
本コラムでは、初心者でもできる構成案の立て方から絵コンテの描き方、そしてそれがもたらすメリットまでを丁寧に解説します。最後まで読めば、「動画は撮る前にもう始まっている」ことを実感できるはずです。
「企画はあるし、あとは撮影すれば大丈夫」そう思っていても、いざ現場に立つと「どこから撮ろう?」「セリフの流れはどうする?」と迷うことが多いはず。
構成とは、映像全体の流れを整理し、目的に合わせてストーリーを組み立てる作業です。映画でいえば脚本、建築でいえば設計図。これがあるかないかで完成度は大きく変わります。
特に予算や時間が限られている個人制作では、構成があるかどうかが“成功か失敗か”を分ける分岐点になるのです。
では、実際に構成案をどう作るのかを見ていきましょう。
映像のゴールを最初に定めます。
「商品の魅力を伝えたい」「物語で感動させたい」「解説で理解を深めたい」――目的が違えば、映像の組み立ても変わります。
誰に向けた映像なのかを具体的に想定します。例えば、「学生」「社会人」「経営者」など、対象によって言葉の選び方やテンポが変わります。
古典的ですが、「起承転結」や「三幕構成」は映像構成に最適です。
1シーンごとに「誰が」「どこで」「何をするか」を整理し、箇条書きにします。これを「シーンリスト」として整理するだけでも撮影がぐっと楽になります。
構成案が“文章の設計図”だとすれば、**絵コンテは“ビジュアルの設計図”**です。
絵コンテには、カメラアングル・動き・セリフ・BGMなどを具体的に書き込みます。絵が苦手でも問題ありません。スティックマン(棒人間)や簡単な矢印で十分。重要なのは、映像のイメージをチームや自分自身に伝えられることです。
絵コンテを描いておくと、完成イメージを共有しやすく、「思っていた映像と違う」というミスマッチを防げます。
「絵が下手だから無理」と思う必要はありません。絵コンテはアート作品ではなく、情報を伝えるツールです。
ノートや専用テンプレートに「16:9の枠」を描きます。これが画面のサイズ。1ページに4~6コマ程度が一般的です。
棒人間や四角でOK。「人物が中央に立っている」「カメラが左から寄る」などを表せれば十分。
セリフ、ナレーション、カメラワーク、BGMを短くメモ。絵だけでは伝わらない部分を補います。
構成案の流れに沿って並べていきます。番号を振っておけば編集時も混乱しません。
紙とペンだけでなく、今は便利なデジタルツールも揃っています。
デジタルで作るメリットは、修正が簡単でオンライン共有もしやすいこと。個人でもチームでも活用できます。
構成や絵コンテは“ガイドライン”であり、“絶対のルール”ではありません。撮影中に思わぬ良いアイデアが出ることもあります。柔軟に変更できる余地を残しましょう。
絵コンテで「1カット10秒」と書いても、実際には長すぎたり短すぎたりすることがあります。試し撮りやストップウォッチを使って感覚を確認しておくと安心です。
自分だけでなく、他人が見てもイメージできるように描くことが重要です。チーム制作なら特に意識しましょう。
構成と絵コンテをきちんと作ると、映像のクオリティが一段上がります。
つまり、構成と絵コンテは“作品の完成度”だけでなく、“制作プロセスそのもの”を効率化してくれるのです。
映像制作は「カメラを回すところから」ではなく、「構成や絵コンテを描くところから」始まります。
完璧である必要はありません。棒人間の絵でも、シンプルなメモでも大丈夫。大切なのは「頭の中のイメージを紙に落とし込むこと」です。
撮影を始める前にペンを持ち、構成を練り、絵コンテを描いてみてください。きっとその一手間が、あなたの映像を一段と“伝わる作品”へと進化させてくれるはずです。